2010年 10月 29日 (金曜日)

.学校: 大塚台の風10月

ヤクーバとライオン

木枯らし一号が吹いて、一気に冬が近づいたようです。そんな寒い朝にも子どもたちは元気に登校して来ます。ある朝には、影踏みをしながら走ってくる子たちがいて、懐かしい気持ちになりました。昨年の今頃は、インフルエンザの感染が広がり、学年閉鎖や学級閉鎖に踏み切ったことを思い出しますが、今年は平穏な日々をありがたく思います。そして、どんなに寒くても、半袖のTシャツで登校している子どもや、休み時間に外で走り回って遊ぶ子どもを見ると、私たち大人も寒さには負けていられないという気持ちになります。
 さて、10月27日から読書週間が始まりました。この読書習慣は、終戦間もない昭和22年に「読書の力によって、平和な文化国家をつくろう」と始まったそうです。そのころから比べると私たちの生活は格段によくなっていますが、今も読書が私たちの心を潤し耕してくれて、教養を高めるために大切な行為であることは言うまでもありません。
 本校では、朝読書やボランティアの方々による読み聞かせなどで、読書活動を推進していますが、ご家庭でも読書を大切にしてくださっていることを感じた出来事があります。ある本を持って登校した子が「この本は、お母さんが子どもの頃に読んだ本なんだよ」と見せてくれたのです。装丁などは色あせても、その本は、また新たに物語の楽しさを子どもに伝えているのですね。子どもは、物語からのメッセージだけでなく、お母さまの思いも感じ取ったことでしょう。
 そこで、今月はある絵本の紹介をしたいと思います。黄土色の地色に黒一色で描かれた力強い絵が、絵本というイメージを打ち破る、「ヤクーバとライオン」。主人公はアフリカの奥地に住むヤクーバという少年です。この村では、成長した少年たちはライオンと独りで戦って、たくましい勇気があることを示して戦士になるための祭りがあるというところから物語は始まります。テーマは、「勇気」と「信頼」。ストーリーはあえて書きませんが、読み手は、自分がヤクーバだったらどうするだろうということを考えずにはいられません。この本を翻訳した柳田邦男さんは、あとがきでこんな言葉を私たちに投げかけます。「勇気とは何だろうか。困難な問題に直面したとき、逃げずに真正面から立ち向かう勇気。中傷されてもひるむことなく人前に出ていく勇気。いじめられている子を守ってやる勇気。…勇気にはいろいろな勇気がある。真の勇気とは…」
 大人でも答えが出せない重いテーマですが、「日本の大人や子どもたちにこの絵本のメッセージを伝えたい」と柳田邦男さんは書かれています。私も息子が小学生か中学生の頃だったら、読んで話し合いたかった、と思いました。本校の図書室には、2冊の「ヤクーバとライオン」があります。見つけたら手に取って見てくださいね。
最後になりましたが、今週行われた「コミコミスクール」と「風の子作品ランド」にはたくさんの地域や保護者の方々がご来校くださいました。いつも本校の教育活動に多くの方々が関心を持ち、温かく見守ってくださることに感謝申し上げます。
            校 長 荒川 由美子
掲示者: 17時07分